自覚2

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「お疲れ様です。戻りました。」 「お疲れさん。」 「どうしたんですか?そんなとこに座って。」  マナトが俺の座っているソファの脇に歩み寄る。 「ん?藤村さんに報告だったんだ。だからいろいろこれからのこと考えてた。」 「藤村さんはお元気ですか?」 「ああ、元気だよ。忙しそうだけどな。」 「そうですか。」 「マナト。おまえ調子はどうだ?」  俺はソファの背もたれに頭を預けてマナトを見上げる 「調子?ですか?」  相変わらず読めない表情をする。 「ああ、順調か?なにか困ってるとかないか?」 「いえ、今のところ特に。でもまだこれからなんですよね?」 「ああ、これからだ。」 「今のところ余裕がありますけど、本格的な案件が来たらどうでしょうね。時間も取られるし、俺もどれだけのことができるか自分でもわかりません。」 「それは俺も同じ。」 「がんばりましょう。」 「ああ、頼りにしてるよ。」  マナトは俺をじっと見詰める。  まっすぐな目。学生のときから変わらない眼差し。何事にも曲がらない。  藤原さんが初めてマナトを連れて来た時、危うさが剥き出しで心配だったけれど一緒にいるうちにそのイメージは本来のまっすぐさに取って代わった。まあ、危なっかしいことには変わりはなかったが。   「おまえは変わらないな。」  そのまっすぐな目で何を見てる? 「まるで自分が変わったみたいな言い方ですね。」 「俺も変わらないか?」 「変わらないですよ。」 マナトは微笑む。笑い方も昔と変わらない。 「そうか。少しは大人になったつもりなんだけどな。」 「それは俺も同じです。でも、タカヤさんが成長した分だけ俺も成長してて、だから気が付かないのかも。」 「その考え方だとおまえは俺に一生追いつけない。」 「追いつけなくてもいいです。そりゃ追いつきたいですけど、でも追いつけなくてもそれは仕方ないし、俺は・・・タカヤさんが俺の前にいてくれるならそれでいいですよ。」 「えらく懐かれてんだな。」 俺はソファから立ち上がる。 「懐いてなかったら、今ここに居ませんよ。」 「しょうがねえな。今日は奢ってやるよ。」 「やった。」  
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