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「お疲れ様です。戻りました。」
「お疲れさん。」
「どうしたんですか?そんなとこに座って。」
マナトが俺の座っているソファの脇に歩み寄る。
「ん?藤村さんに報告だったんだ。だからいろいろこれからのこと考えてた。」
「藤村さんはお元気ですか?」
「ああ、元気だよ。忙しそうだけどな。」
「そうですか。」
「マナト。おまえ調子はどうだ?」
俺はソファの背もたれに頭を預けてマナトを見上げる
「調子?ですか?」
相変わらず読めない表情をする。
「ああ、順調か?なにか困ってるとかないか?」
「いえ、今のところ特に。でもまだこれからなんですよね?」
「ああ、これからだ。」
「今のところ余裕がありますけど、本格的な案件が来たらどうでしょうね。時間も取られるし、俺もどれだけのことができるか自分でもわかりません。」
「それは俺も同じ。」
「がんばりましょう。」
「ああ、頼りにしてるよ。」
マナトは俺をじっと見詰める。
まっすぐな目。学生のときから変わらない眼差し。何事にも曲がらない。
藤原さんが初めてマナトを連れて来た時、危うさが剥き出しで心配だったけれど一緒にいるうちにそのイメージは本来のまっすぐさに取って代わった。まあ、危なっかしいことには変わりはなかったが。
「おまえは変わらないな。」
そのまっすぐな目で何を見てる?
「まるで自分が変わったみたいな言い方ですね。」
「俺も変わらないか?」
「変わらないですよ。」
マナトは微笑む。笑い方も昔と変わらない。
「そうか。少しは大人になったつもりなんだけどな。」
「それは俺も同じです。でも、タカヤさんが成長した分だけ俺も成長してて、だから気が付かないのかも。」
「その考え方だとおまえは俺に一生追いつけない。」
「追いつけなくてもいいです。そりゃ追いつきたいですけど、でも追いつけなくてもそれは仕方ないし、俺は・・・タカヤさんが俺の前にいてくれるならそれでいいですよ。」
「えらく懐かれてんだな。」
俺はソファから立ち上がる。
「懐いてなかったら、今ここに居ませんよ。」
「しょうがねえな。今日は奢ってやるよ。」
「やった。」
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