灰色の夜

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「どうしてこんなことになっちゃったんだろう」  考えても仕方がないのに、二葉は考える。そして、子供の頃のことを思い出す。  子供の頃、家は貧しかった。母の度重なる男遍歴とその度に増える子供のせいで。  そんな母を長女の一咲(かずさ)はもんくをいいながらも笑って許した。どんどん増える妹たちのことを嫌な顔一つ見せずに世話をしていた。  しかし、二葉は違う。  無計画に子供を作る母を許せないと思っていた。  温海(あつみ)家の次女として6人の妹たちの世話をするのが嫌だった。  だから二葉は中学三年時の担任から、住み込みで働くことが出来て、中卒でも美容学校に入り美容師の資格を取れるという美容師見習いの仕事を奨められた時、即答した。  最も二葉が母を嫌いだろうが好きだろうが、働かずに高校に行くお金などなかった。  また妹たちが大きくなるにつれて年々部屋が狭くなっていくと皆口に出さずとも感じていたので、二葉が家を出ることは大変歓迎された。
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