2人が本棚に入れています
本棚に追加
不安そうな顔で掲示板を見る人や、その後ろで抱き合う女の子や
ハイタッチする男ども。
そんな喧噪のなか
「えーと、俺の名前は、っと。」
ずらずら配列された名前から自分の名を探す。
「・・・D組か。」
2年D組。
今日から高校2年生の幕があける。
「同じクラスだねよろしく!」
不意に声をかけられたので一瞬自分のことではないのかと思った。
しかしその人の目は、ジッと俺を見つめていた。
「お・・お、う。」
俺はこの人を知っている。
いや話したことはないが去年一緒のクラスだった小田切美沙だ。
俺は人の名前を覚えるのは得意じゃない。
ましてや話したこともないこの人を知っていた。
それは、この人がいわゆる「マドンナ」だったからだ。
少なくともこの学年の男子で知らない人はいないだろう。
その容姿は「ビーナスの彫像画」は言い過ぎたが、
整った顔に髪は肩くらいの長さで、スラッと伸びた脚が制服の魅力を掻き立てる。
個人的には彼女にしたいです。
目立つようなことはしないが、その容姿のせいでなにもしなくても目立つ。
しかし、同じクラスだったがこれまで男子と話している姿は見たことがなかった。
どうして俺なんかに、というよりは、罰ゲーム的なあれなのかと思った。
「はい美沙の負けー。じゃああの掲示板の前にいるさえない顔系男子に話しかけてきてー。」
的な、おいおい新学期そうそうきついぜ。
「・・?どうしたの?」
「い、いや!なんでもない。」
「そっか。じゃあ、またクラスでね!」
彼女は純粋な笑顔でそう言うと、走っていった。
ふう。
俺の心臓も全力疾走したかのようにばくばく脈打っていた。
最初のコメントを投稿しよう!