夢からさめて

1/4
前へ
/128ページ
次へ

夢からさめて

真っ暗な世界で一人佇む。 上も、下も、右も、左も。 どこまでも続く暗黒。静寂が支配するそこでは、自分の呼吸音以外に音を発するものはない。 ただ突っ立っていても仕方がないと、とりあえず一歩を踏み出す。 「───」 カツン、と足音が響いた。 …よかった。どうやら踏む地面はあるらしい。そんな安堵にも似た感想を抱きつつもまた一歩進む。カツン、カツン、カツン。暗闇の中を彷徨う。ただ、どこかに光はないかと目を凝らす。 歩き続けるうちに、ふと思う。自分の体すら視認できない暗闇の中、宛もなく歩き続けるのは一体全体なんの苦行なのかと。 立ち止まっていても意味がないとは思うが、はたして…自分は、何故こんな場所にいるのだろう。 「夢なら…早いとこ醒めてくれ」
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加