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天使は俺の言葉に少し面食らった顔をするも、すぐにこにこ顔に戻り、こう言った。
「今はまだ秘密ですっ」
人差し指を唇に当てて薄く微笑む白鳳院さんは、本当に可憐で、思わず立ち止まって少しの間見惚れてしまった。
そのことがすごく恥ずかしくて、顔を見られないように先に歩き出す。
「予想はしていましたけれど、やっぱり……」
だから、そんな白鳳院さんの呟きが俺の耳に届くことはなかった。
◆
「ふう、ここかな?」
「みたいですね」
ようやく教室にたどり着いた。入る前に一つ深呼吸をして、扉に手をかける。
しかし、俺のその手が扉を開くことはなかった。
「……自動ドア?」
よくわからないけど勝手に扉が空いた。しかもその先には誰もいない。何これ、新手のホラーかなんか? お昼にもお化けが出るなんて聞いてないんだけど。普通に怖い。
「自動ドアじゃなあああいっ! 私よ私!」
「うわ、なんかどこからか声がする! 怖っ!」
いよいよホラーじみてきた……! 果たして俺はこの学校で生き残れるのか!?
「っ!? いってえええええええ!!」
「あらあら……」
緊張によるハイテンションでふざけ倒していた俺に、どこからともなくキックが飛んできた。しかも弁慶の泣き所。涙出てきた。
ちなみに白鳳院さんは隣でのほほんとしてる。天使。
「何すんだよ!」
「いやそれ私のセリフじゃない!?」
果たして、声の主は幽霊でも怪異でもなく、ちんまい女の子だった。俺と同じ制服に見を通していることから、驚くことに高校生らしい。どう見積もっても身長140センチ台なんだけど。ある意味ホラー。
「大丈夫? お譲ちゃん、くる学校間違えてない?」
だがあえてからかう。なんでかっていうと、なんとなくこの子はこういう扱いするのが正解なのかな、って思ったから。
「間違えてないわっ! 私はこう見えても16歳の女の子よ!」
「お名前はなんていうのかな?」
「その対応明らかに信じてないっ!? 七葉 雫(しちよう しずく)よ!」
「よく自己紹介できたねー、偉い偉い」
頭を撫で撫で。
なんだろう、友達いなかった俺だけど、この子――七葉となら普通に話せる。感動した。
「むぅぅぅ……!」
唸る七葉。しかし顔はまんざらでもない様子。よかった、嫌がられないで……(今更だけど)。
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