序章

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「そ、ならいいわ」  そう言って母さんは朝食を食べながらテレビに映るニュースを眺める。俺もそのニュースを一緒に見ながらスクランブルエッグをつまむ。 「なあ母さん、そういえば父さんは?」 「ああ、お父さんなら出張よ。今度はえーっと……そう、沖縄に一年くらいだって」 「へえ、沖縄か」  うちの父さんは出張が多く、家にいること自体が少ない。年に何回かは帰ってくるけど、すぐにまた帰ってしまうからほとんど顔を合わせることがないのだ。 「私、お父さんのとこ行こうかと思ってるのよねえ」 「ふーん」 「そろそろあんたも一人で生活できるだろうし、友達連れてくる気配ないし、私もお父さんと一緒に出張しようかなって」 「いいんじゃない?」  その時、俺は母さんの話をほとんど聞き流していた。脳内では高校最初のイベントである自己紹介について考えるのに必死だったし、母さんは基本どうでもいいようなことか俺の罵倒しかしないから、まさかそんな重大なことをさらっと言うとは思ってもみなかったのだ。 「なら私、明日から発つから。あんたの返事待ちだったのよねえ」  母さんはそういうと食べ終わった食器を洗うために台所へと向かった。  俺はそれを目の端で捉えつつ、自己紹介について三パターンほど考えてから朝食を食べ終えた。 「ごちそうさまでした」  あんな母親ではあるが、俺のために作ってくれたものだし、きちんと手を合わせる。 「はい、お粗末さま。さ、さっさと学校行って来なさい」 「ういー」  俺は返事をして二階にある自分の部屋へ。そして、今日から通うことになる高校の制服に袖を通した。
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