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とある史書の一頁 ①
この世界の名は、『マナリア』
世界を創造した女神『ラ・マナリア』
その女神の名を冠した世界である。
その世界の中心には山をも超える荘厳な世界樹がある。
その頂に女神がおられると言い伝えられてきた。
ヒトは女神を信仰し、命有ることを感謝し、祈りを捧げた。
それは女神に届き、世界樹の葉は翠色に。実は黄金に輝き、世を照らしたという。
ただ、ヒトは欲深き生き物であった。
とめどなく湧き出る欲は、他の生物を淘汰し、同族同士で争いを起こす。
長い年月をかけ、ヒトにとっての女神は都合の良い存在へと変わっていく。
ああ、女神様。どうか。
祈りは変わる。
溢れる欲が、願いに。
叶わぬ願いが、恨みに。
それぞれ自分の想いを女神に捧げる。
女神は全てを受け入れた。
やがてヒトとヒトの間で大きな戦が起こる。
森は焼かれ、川は汚れ、地は荒れた。
すると、異変が起きた。
世界樹が枯れ始めたのだ。
欲という黒い滴りは、長い年月をかけて淵となり、女神をも飲み込もうとしていた。
女神は嘆き悲しみ、涙を流した。
その涙は止まぬ雨となり、ヒトに降り注いだ。
戦は終わったが、雨は止まなかった。
そこで二人の英雄が、女神を救おうと立ち上がった。
二人は兄弟であった。
兄は言う。
「力だ。御する力が必要だ」
弟は言う。
「知識だ。解する知識が必要だ」
兄の力は秩序を作り、それを守り続けると女神に誓った。
弟の知識は叡智を与え、それを語り続けると女神に誓った。
女神は全てを受け入れた。
雨は止み、ヒトは己の過ちを悔い、女神へ祈りを捧げた。
それから、長い時間を経て世界は再び黄金に染まったという。
ヒトは欲深い生き物だ。
忘れてはいけない。
秩序と叡智を。
今も女神様は、世界樹の頂からヒトを見守ってくださっている。
著者不明
「マナリアの伝説」から抜粋
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