引きこもる魔王と訪れる勇者

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「魔王様、魔王様起きて下さい」 白く細い少女の手に肩を揺り動かされ、逢魔御影(おうまみかげ)の意識はゆっくりと浮上していく。 そうすると、眠りに落ちていた間は気にならなかったカーテンの隙間から差し込む日の光や、小鳥の囀(さえず)りが御影の安眠を妨害してくる。 それら全てから逃げるように御影は布団を引っ張り上げ、顔まですっぽりと布団の中に潜り込む。 「もう、いい加減起きて下さい。日曜だからっていつまでも寝ていては駄目ですよ」 しかし、どんなに布団に潜り込んだ所で、日の光と小鳥の囀りからは逃げられても窘(たしな)めるような少女の声からは逃げられない。 「……いつまでも寝てたらって、今何時だよ?」 「七時です」 「……俺、寝たの朝の六時なんだけど」 それを聞いた少女は腰に手を当て、呆れたようにため息を吐いた。 「またネットゲームをしていたんですか?」 「……そんなとこ」 手強い睡魔に襲われながらも何とか会話をしていた御影だったが、そろそろ限界が訪れる。 一度浮上してきた意識がまた沈んで行こうとしたその時。 それを目敏く察した少女は会話を打ち切り、御影から無理矢理は布団を剥ぎ取った。 「あ~……」 「情けない声を出さないで下さい。まったく……」
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