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布団を取られては仕方ないと、御影は渋々体を起こす。
「おはようございます、魔王様」
「……おはよ」
反射的に挨拶を返し、御影は頭を掻きながら見る者を眠りに誘うような大きな欠伸(あくび)をする。
そして、傍(かたわ)らに立ち、微笑みを浮かべている少女に、まだ覚醒しきっていない眼(まなこ)を向けた。
赤月真夜(あかつきまや)。それがこの少女の名だ。
ル ビ ー
紅玉石を思わせるような赤眼と、肩甲骨の辺りまで伸びた赤味掛かった茶髪を持つ少女。
その容姿は百人に聞けば百人が美少女と答えるであろう程整っていて、割合は可愛い7綺麗3と言った所か。
優しげな笑みと、滲み出ているおしとやかさは、その雰囲気から大和撫子か、はたまた深窓の令嬢を思わせる。
「朝食は出来ているので、顔を洗ってから来て下さいね」
「ああ」
そう言い残して御影の部屋を出て行く真夜の背中を見送り、御影はもう一度大きな欠伸をして立ち上がった。
御影と真夜は幼なじみである。
さっきまでの遣り取りなど、ほとんどラブコメの朝の定番だが、御影と真夜には定番ではないことが幾つかある。
その内の一つは家が隣同士ではないということだ。
というより、むしろ一緒に住んでいる。
そして、もう一つ。最たる違いがある。
それは、御影も真夜も人間ではないということだ。
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