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「柚宇さんコーヒーありがとうございます。学校行ってきますね」
凛は、コーヒーを飲みほすと立ち上がった。
「行ってくるわ」
トーストを食べ終わり、凛と店を出る。家の脇にある自転車に乗って今日から通う双峰高校を目指す。
家から少し遠いこの高校は、かなり大きい。そして、この辺りでは一番の進学校だ。
うちの中学の偏差値は低めで、双峰を目指すなんて言ったらエリート扱いを受ける。現に、同級生は受験したのが六人、そのうち受かったのは五人だった。その俺もそっち側の人間のはずだったが、勉強が好きな凛は双峰高校に行きたかった。そこで巻き込まれたのが幼稚園から一緒の俺だった。
とはいうものの、俺の学力は中学内で中の上という微妙なレベル。合格するにはほど遠いものだった。しかし凛がこれまた幼馴染の遥香に相談すると、遥香は毎日家に押しかけ勉強を教えて来るからたまったものではなかった。
まあそのおかげでこうして双峰高校に合格し、全く予想のつかない高校生活を始めることができるという点ではある意味では感謝している。
「今日から高校生だよ、楽しみだよ」
やけにテンションの高い凛は、自転車を漕ぐスピードも若干速く明らかに浮かれている。
今日は入学式、つまり一回目の登校になるのだが、既に双峰高校には五回程行っている。そのうち山塊が凛に連れられて下見にいっただけ、という理由だから道に迷うことはもう無い。
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