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駅前の大きな商店街を抜けた先に、その雑居ビルはあった。 1階は中華料理店が入っており、ビルの前で立ち尽くす私をお客さんと勘違いした店員さんが、こちらの様子を窺っている。 見上げた3階の窓に貼られたカッティングシートに、一人おののく。 『劇団rush』 新進気鋭の演出家が率いる、今最も注目されている若手劇団。 演劇雑誌の特集ページを開いて、キャーキャー言ってた萌を思い出す。 確かに。 仏頂面で掲載されていた演出家は、昨夜の男だったような。 チャンスなのかピンチなのか解らない状況に、思わず唾を飲んだ。 .
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