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「おはようございます。……圭、あなたなんですか?彼女にオーディションするって言ったの。」 「あぁ。 ……おい、早く入れ。」 ドアの前を塞ぐ彼女を押し退けて、彼は私を中へと案内する。 あ、思い出した。 この人、片桐圭吾(かたぎりけいご)だ。 オーディション会場だと思っていたのは、単に劇団の稽古場で。 部屋の左側には、小道具や衣装ケースが山積みされている。 そして。 窓に面した右隅にはシンプルなデスクが4つ、向い合わせで置かれている。 彼女は片桐圭吾をデスクまで引っ張っていくと、彼を責めた。 「勝手な行動は控えて下さい!」 私達しか居ない稽古場に、棘のある声が響く。 .
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