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それを慌てて拾えば、目に飛び込んでくるト書きと台詞。 「あと15分で相手役が来る。それまでに目を通しておけ。」 「えぇっ?!は、はい!……あぁ!着替えたいんですけど。」 「必要ない。その格好でやれ。」 「あと、履歴書は……。」 「そんな物当てになるか。それに、お前に履歴書に書く程の経歴があるとは思えん。」 ……お、仰る通りで。 「早く目を通さないと、初見で演じることになるぞ。」 「はいっ!」 稽古場の隅にしゃがみこんで、早速読み始める。 冒頭に付けられたあらすじを頭に叩き込み、台詞を小さく声に出しながら追う。 恋愛物。 しかもライトなタイプではなさそうだ。 だけど、オーディション用の抜粋台本では、劇団の系統までは把握できない。 こんなことなら、萌の話をちゃんと聞いておけば良かった。 .
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