355人が本棚に入れています
本棚に追加
それを慌てて拾えば、目に飛び込んでくるト書きと台詞。
「あと15分で相手役が来る。それまでに目を通しておけ。」
「えぇっ?!は、はい!……あぁ!着替えたいんですけど。」
「必要ない。その格好でやれ。」
「あと、履歴書は……。」
「そんな物当てになるか。それに、お前に履歴書に書く程の経歴があるとは思えん。」
……お、仰る通りで。
「早く目を通さないと、初見で演じることになるぞ。」
「はいっ!」
稽古場の隅にしゃがみこんで、早速読み始める。
冒頭に付けられたあらすじを頭に叩き込み、台詞を小さく声に出しながら追う。
恋愛物。
しかもライトなタイプではなさそうだ。
だけど、オーディション用の抜粋台本では、劇団の系統までは把握できない。
こんなことなら、萌の話をちゃんと聞いておけば良かった。
.
最初のコメントを投稿しよう!