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口を開こうとした時、要君の視線が私の奥へと向けられた。
「待ってください!」
「……。」
私を通り越した彼の呼び掛けは、この場を離れようとしていた圭さんに対するもの。
「……片桐圭吾さん、ですよね。」
背を向けた圭さんが、ゆっくりと振り返った。
「知ってるのか、俺のこと。」
「はい、芝居の世界では有名人ですから。」
「はは、有名人か。」
薄く笑った圭さんに、要君はツカツカと歩み寄る。
「どうして片桐さんが宇多さんと一緒に居るんですか?」
「……。」
「……芝居を餌に、宇多さんをたぶらかすのは止めて下さい。」
「っ?!ちょっと何言って―――。」
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