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「……要君。私、圭さんが好きなの。本当に、好きなの。」
「……。」
要君には一度も言ったことのないその言葉が、鋭利な刃物のように彼の心を抉る。
握り締められた彼の拳が、微かに震えた。
「……片桐さんは、宇多さんのことをどう思ってるんですか?」
圭さんは何かを見極めるように、じっと要君を見つめていたけど、僅かに頬を緩めて呟いた。
「……好きだよ。とても。」
圭さんの声が皮膚の表面を走り、ビリビリと痺れた。
「きっと宇多には、お前のように真っ直ぐな奴が相応しいんだろう。
それに、ガキ相手に女を奪うなんてのも格好の悪い話だと思ってる。」
圭さんが正面から見据えると、戸惑いに揺れる要君の瞳。
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