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「無視するな。心配するだろ。」
「……。」
眉間に皺を寄せて携帯を切った圭さんに、憎まれ口の1つでも叩いてやろうと思ったのに。
口を開けば涙が溢れそうで、グッと奥歯を噛み締めた。
「宇多。」
「……。」
「お前は今、良い顔してる。」
「そんな訳―――。」
「お前が感じている痛みは、これからの芝居に必ず深みを与えてくれる。お前の糧となるならば、あいつも救われる。」
「……。」
圭さんは、私の頬に手を当てると、親指で肌をそっと撫でた。
「だから、我慢せずに全て吐き出せ。
ちゃんと受け止めてやるから。」
「―――っ!」
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