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弾かれたように立ち上がると、膝に置いていたバッグがドサリと音を立てて地面に落ちた。
勢いのままに圭さんの胸にぶつかって、彼のシャツにしがみつくと。
背中に優しく回された手の温もりに、涙腺が崩壊する。
「うっ……、くぅ……。うぅっ。」
静かな夜の公園に私の嗚咽が響く。
時折、誰かが公園を通り過ぎる気配も構わずに、圭さんの胸の中でひたすら肩を震わせた。
「……もう、平気か?」
圭さんの胸から顔を上げコクリと頷くと、彼は足元に転がるバッグを拾い、街灯の明かりを頼りに私を覗き込んで。
長い時間をかけて頬の上で乾いた涙の跡を手のひらでグイッと擦り取る。
「……宇多、行くぞ。」
促されて歩き始めたが、アパートをスルーして車へと向かう圭さん。
首を傾げてみたものの、助手席のドアを開けた彼は、有無を言わさず私を押し込んだ。
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