355人が本棚に入れています
本棚に追加
大輔さんのセクハラのお陰……と言うのは癪に障るけど、余計な力は抜けた気はする。
佐倉さんは私達のスタンバイを確認すると。
「では、シーン6からです。宜しくお願いします!」
パンッ!
彼女が手を叩けば。
大輔さんの空気が一転した。
感情を乗せられた台詞は、まるで生き物のように私の身体を絡めとり、気付かぬ内に心を染めていく。
この人、上手い……。
こんなに下手くそな私が、同じ板の上に立っていることが恥ずかしい。
それなのに、彼は逃げに走る私の瞳を捕らえ、優しく微笑む。
台本を追うだけだった私は。
台詞と、緩急を付けた間合いだけで、彼の掌中へ惹き込まれていく。
.
最初のコメントを投稿しよう!