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大輔さんのセクハラのお陰……と言うのは癪に障るけど、余計な力は抜けた気はする。 佐倉さんは私達のスタンバイを確認すると。 「では、シーン6からです。宜しくお願いします!」 パンッ! 彼女が手を叩けば。 大輔さんの空気が一転した。 感情を乗せられた台詞は、まるで生き物のように私の身体を絡めとり、気付かぬ内に心を染めていく。 この人、上手い……。 こんなに下手くそな私が、同じ板の上に立っていることが恥ずかしい。 それなのに、彼は逃げに走る私の瞳を捕らえ、優しく微笑む。 台本を追うだけだった私は。 台詞と、緩急を付けた間合いだけで、彼の掌中へ惹き込まれていく。 .
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