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長い擦れ違いの末。
漸く想いの通じ合う二人。
切々と語られる彼の想いに、キュウと心が鳴く。
遠慮がちに伸びた彼の手が、触れるか触れないかの間合いで頬を滑り落ちる。
『……やっと、君の側に居られるんだ。』
『嬉しい……。』
『これからは、ずっと一緒だ。
……もう、一人にはしない。』
抱き寄せられた身体の間で、台本がクシャッと音を立てる。
彼は僅かに身体を離すと、両耳を覆うようにわたしの頬を包む。
微かに互いの鼻がぶつかり。
息のかかる距離で、今にも泣き出しそうな彼の表情に心を奪われる。
顔を傾けた彼は、ほとんど残っていない私達の距離を更に詰めて―――。
「そこまで!」
片桐圭吾の声が響いたけど。
それを無視した大輔さんの唇が、私のそれを優しく吸った。
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