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まだ唇に残る温もり。 それが要君のそれと被り、急に襲われる罪悪感。 ……さっき、思い出しちゃったからかな。 タイミング悪い。 「おい、オーディションは以上だ。 結果は追って伝える。佐倉、連絡先。」 「はい。」 片桐圭吾の言葉に、佐倉さんは私に手を差し出した。 「履歴書、持ってきてるんでしょ?預かっておくわ。」 「はい。 ……あの、結果っていつ頃解るんでしょうか?」 恐る恐る尋ねると、彼女は私の顔を一瞥し、肩を竦めた。 期待してる訳じゃない。 駄目なら変に引っ張られるより、この場で落とされる方がいいのに。 「今日は、ありがとうございました。」 スポーツバッグを肩に掛けて頭を下げると、大輔さんがにこやかに手を振った。 .
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