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「おいっ!さ―――。」
きつく掴まれた腕に、グラスの中でカフェオレがタプンと際どく揺れる。
驚いて見上げた先には、見ず知らずの男が、私と同じ表情でこちらを見つめている。
短い沈黙の中で。
男の懇願するような眼差しが、ゆっくりと落胆の色に変化した。
「……すまない。知人と見間違えた。」
「いえ……。」
漸く解放された腕に、血が通っていくのを感じる。
余程、大切な人なんだろうか。
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