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男は、私の前に広げられたチラシを一瞥する。 「芝居、好きなのか?」 「へっ?あ、はい……。」 品定めするように、私の頭から足の先まで、男の視線が往復すると。 チラシの山のてっぺん、赤い太ゴシック体で書かれた『役者求む!!』の文字を冷めた目で見つめる。 『お前みたいな十人並みの容姿で役者志望かよ。』 男の心の声が聞こえてきそうで、スツールの上で小さく俯く。 すると、伸びてきた腕が不合格通知の入っていた封筒を引き寄せると、私に向かって手を出す。 .
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