356人が本棚に入れています
本棚に追加
男は、私の前に広げられたチラシを一瞥する。
「芝居、好きなのか?」
「へっ?あ、はい……。」
品定めするように、私の頭から足の先まで、男の視線が往復すると。
チラシの山のてっぺん、赤い太ゴシック体で書かれた『役者求む!!』の文字を冷めた目で見つめる。
『お前みたいな十人並みの容姿で役者志望かよ。』
男の心の声が聞こえてきそうで、スツールの上で小さく俯く。
すると、伸びてきた腕が不合格通知の入っていた封筒を引き寄せると、私に向かって手を出す。
.
最初のコメントを投稿しよう!