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グリーンランド大陸の東端に、グラーニという名の狩猟中心の生活で生計を立てる村がある。
この村には、遠い昔の戦乱で活躍した“ 剣聖 ”の子孫ヴァルクス一家がひっそりと暮らしていた。
この物語は、剣士の卵である“ ソルス ”とその母親である“ ヒルダ ”による愛とスパルタと無茶振りの物語である。
※※※
肌寒くも清々しい早朝の靄が立ち込める朝のこと、母親であるヒルダは息子のソルスを呼び立てて、言った。
「よく聞け、息子よ。
実はな、お前は橋の下で拾ってきたのだ」
意味がわからない。
唐突すぎる母親の言葉に、ソルスは端整な顔をキョトンとさせて黙り込み、食卓テーブルの向かいで呑気に番茶を啜る母親のしたり顔と対峙して、そこはかとなく悪い予感を感じた。
「ショックだろうな、そうだろう。そうだろうとも!
だが心配するな。
私が赤の他人であるお前を一人前の剣聖になるようがっつり指導してやるのだからな!」
母ヒルダが仁王立ちで立ち上がった瞬間、座っていた椅子がガターンと後方に倒れたのだが、彼女は全く気にする素振りも見せずに、腰までの蒼い髪を手櫛で梳き上げ、得意気に笑った。
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