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「亜理砂」
はっとした。
不意にわたしの左手から温もりが伝わってきて、今はじめて彼と手を繋いでいることに気がついた。
そして、わたしの手が細かく震えていることにも。
「亜理砂、今だよ。今、君は変わるんだ」
「……無理だよ」
「亜理砂…」
「怖いよ、だって見えないよ、どうすればいいか分からない。怖いよ」
必死に言葉を紡ぎ、自分の奥底にある黒い気持ちを彼にぶつけた。
目にじわりと涙がにじむ。
こんなにも臆病なのに。
「それでも、君はこの道を選んだ。暗くて、怖い道を」
きれいな金色の瞳が真っ直ぐにわたしを射抜く。
「強くなくてもいいんだ。勇気とか覚悟とか、そんなものちょっとでいい。弱くても、しっかり前に進むことはできるんだよ、亜理砂。逃げちゃだめだ、君なら頑張れる」
「頑張れない!」
「頑張れるよ、絶対。だから僕はここに来た」
「……え?」
「変わりたくて、頑張りたい君に、呼ばれたんだ」
「わたしが…」
「大丈夫、一人じゃない。僕がいる」
繋いだ手が熱い。
想いが、感情が、そのまま彼へ流れていってるみたいで。
不思議とそこから力がみなぎっているような気がして。
ふとみた彼の顔にはとても柔らかな笑みがあって。
「僕は“ひかり”だよ?君がもう迷わないように、真っ直ぐ歩いて行けるように、僕が照らす。君の道をね」
その為に来たんだよ。
優しい言葉。甘い声。温かい手のひら。
彼がわたしの道を示してくれる、ひかり。
淡くて綺麗でおぼろげで。
人の目を離さない、ひかり。
その金色のひかりが、照らし続けてくれるなら。
ずっとずっと、隣にいてくれるなら。
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