プロローグ

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 あの日、俺は沢山の大切なモノを失った。 *************  蒼い空を覆い尽くす黒い煙。  辺りを焼きつくそうとする炎。  形を失ったものは、崩れ落ち辺りに響き渡る。  つい数時間前までは立派な銅像だったものは、瓦礫へと変わっていた。 「春兎(はると)早くしろ! 追手が来るぞ!」  負傷した少女に、肩を貸す少年は、紺色のコートを着た少年へと呼びかける。  春兎と呼ばれた少年は、立ち止まったまま通ってきた通路を見つめる。 「鷲司(しゅうじ)……美魚(みお)を連れて先に行ってくれ」 「お前何言ってるんだよこんな時に、お前を置いて行けるわけないだろ!」  鷲司と呼ばれた少年は、春兎と同じ服を着ており、被っていたフードを取る。  少し赤みがかった髪と整った顔、黒い瞳は春兎だけを睨みつけている。 「ほら行くぞ、こんな所にいる間にも相手は迫ってきてるかもしれないんだ」 「……遅かれ早かれ追いつかれるよ、だから鷲司は美魚を安全な場所なで連れて行ってやってくれ、俺はここで追手を食い止めるから」 「ふざけんな! お前一人にできるわけないっていっただろうが! お前が残るなら俺も残るぞ」 「美魚はどうする?」 「……」 鷲司は、春兎の顔を直視することができず、ただひび割れた地面を見つめる。 数秒間の沈黙のあと、鷲司は決意すると春兎の目を見つめる。 「……なら、俺が残って追手を食い止める、春兎が美魚を連れて逃げてくれ」 「それは鷲司の頼みでも承諾できない、それにお前左手が負傷してるの知ってるんだぞ」 「クソ……いつもみたいに三人でっていうのは無理なのかよ」 「ああ、すまない」 二人の少年は奥歯を噛みしめながら下を俯く。 未だに遠くの方では爆発音が聞こえてくる。 「なんで……なんでだよ」 「先生を助けにいこうといって巻き込んだのは俺だし、今回の出来事が起きた時から心の中で、なんとしてでも俺の力で皆を守るって決めていたから」 「……」 「だから、俺がなんとしてでも追手を押さえる、鷲司と美魚には絶対に手出しをさせない!」 「春兎……」  春兎の目を見る鷲司は、何をいっても無駄だという事に気づく。  そんな中で、隣で支えられたいた美魚は、意識を取り戻す。
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