プロローグ

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「うっああ……二人ともどうしたの?」 「美魚! 意識が戻ったのか!? 大丈夫か?」 「完全に大丈夫とはいえないけど、なんとかね……鷲司、肩貸してくれててありがとう」  美魚は、鷲司の肩から手をはなし、ふらつく足で立つ。 「二人とも立ちつくしてないで、ここから抜け出そう」 「鷲司」 「ああ……」  鷲司は、美魚の腕を掴むと出口の方へと進む。 「ちょっと! 春兎は?」 「あいつは、ここで追手を足止めする」 「嘘でしょ? 本気なの春兎?」 「本気だ、だから二人は早く逃げてくれ」  美魚のまっすぐな眼差しを見つめることができず、春兎は目を反らして答えた。 「春兎が残るなら私も残るよ、いつも三人だったんだから」 「駄目だ!!」 「春兎……」  辛そうな顔をしながら怒鳴った春兎に、美魚は困惑を隠せないでいる。  そんな二人を春兎と同じく辛そうな表情で鷲司は見つめていた。 「もうこれ以上、俺の前で親しいやつが倒れていくのを見たくないんだ……だから頼む」  通路の奥の方から近づく複数の足音と複数の小さな光が春兎たちの元へと近づく。 「もうこんな所まで来てたのか!」 「私は春兎がなんといっても残るからね!」 「美魚……すまない、鷲司! 美魚を頼んだぞ!!」  春兎は、美魚を鷲司の方へと突き飛ばすと、天井に向かって異能と呼べる力を放つ。  大きな爆発音と共に、瓦礫が降り注ぎ、春兎と美魚、鷲司の三人を引き裂く。 「「春兎!!」」 「ごめん二人とも……、鷲司! 美魚を頼んだ、俺は必ず戻るから!」  美魚の泣く声が瓦礫の壁ごしに伝わってくる。  春兎は、先ほどとは違う力で、剣を出現させる。  ずっしりとした剣を右手で強く握りしめ、意識を切り替える。  春兎の目の前には、すでに姿が捕らえられる距離まで、追手たちが迫ってきていた。  剣を構えると、春兎は、決死の覚悟で向かっていくのだった。
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