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澄み切った青空。
消えかかる飛行機雲。
太陽は輝き、春の陽気がたちこめる。
日差しで反射して輝く白銀色の巨大なタワーは、雲を突き抜け太陽へと伸びる。
そのタワーの周りを、色とりどりのカプセル型の不思議な装置が、数個ゆっくりと浮遊している。
すると、突如カプセルは密集し始め、巨大なスクリーンへと変わる。
『こんばんはセブンスアークにいる皆さん、10時になりました。今週はミーミスブルンとなっております、12時をお楽しみにしていてください』
巨大スクリーンに流れる文字と女性のアナウンスが終わると、タワーから透き通った鐘の音が響き渡る。
都市に住んでいる者なら、いつも通りの日常。
茫然とタワーを眺めている一人の少年だけは、非日常的なものなのだった。
「まさか、ここまでだったとは……」
ツンツンとした癖のある黒髪。右膝部分が擦り切れかかっている灰色ジーパン。無地の白いシャツに、通気性のよさそうなレザージャケット。黒い瞳は真っすぐとタワーを見つめていた。
「メルヘンのような都市と言われているだけはあるな……」
少年は辺りを見渡すと、どの店も見たこともない様なヘンテコな形だったりしていた。
「それだけで驚いてもらっては、困るんだがな」
少年は後ろを振り向くと、ライダースジャケット着てタバコを咥えながら、笑みを浮かべる女性が立っていた。
「あ、師匠お久しぶりです!」
師匠と呼ばれる女性は、少年より頭1つ分小さく、癖のない茶色がかった髪を赤いゴムでまとめて、ポニーテールにしており、瞳も少し茶色がかっていた。
少年は深くお辞儀をし終えると、直ぐに師匠と呼ぶ女性の所にいく。
「だから師匠じゃなくて、瑠香奈さんって毎回いってるだろうが!」
「すいません瑠香奈師匠」
「……ああ、もうそれでいいよ、それで、春兎はいつ頃ここについたんだ?」
「つい先ほどですね」
「昔と変わらず、待ち合わせとかそういうのはきっちりしてるのな」
少し呆れた感じでいう瑠香奈に対して、さあという風に髪をかいてごまかす春兎。
「それより凄いですね、まさかここまでとは思ってませんでした」
「だから、これぐらいで驚いてもらうと困るんだが、正直今見えている光景なんていうのは、氷山の一角にもすぎないからな」
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