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「ところで、ヒミちゃんが手伝うって何をするんだよ?」
太一は気になっていたことを聞いてみた。
「うむ。現場監督だ」
ヒミコの返答に、太一は閉口してしまう。
「何をしている。さっさと作業を続けんか」
早速、現場監督っぷりを発揮するヒミコ。
周囲の村人達の視線も痛々しく、太一は泣く泣く修理を再開した。
「…ところで、妾も復興の手伝いをするのだ。いつまでも名無しの村というわけにはいくまい」
作業をしながら、太一は突然のヒミコの話にポカンとした表情をする。
「名前…つける気か?」
「うむ。今まで考えていたのだがな、邪馬台国というのはどうだろう?邪に馬に台だ」
いきなりのことに太一は唖然としていた。
太一の頭の中には邪悪な馬って何だよとか、そもそも『邪馬』で『やま』ってどうやって読ませるんだとか色んな疑問が生まれたが、村人達が格好いいやら斬新やら褒め称えているのを見て、やっぱり何も言えなくなってしまった。
「どうだ、なかなかセンセーショナルだろう」
ヒミコは周囲の村人に同意を求めた。
もの凄い勢いで頷いていく村人達。
「邪馬台国でいいよな?」
「ヒミコ様のご提案だぞ!」
「邪馬台国万歳!」
『万歳!万歳!万歳!』
万歳の渦はすぐに広がり、輪唱が始まる。
新興宗教っぷりは相変わらずだった。
太一はその様子を見て呆れながら、ヒミコと一緒に居れれば名前なんて何でもいいやと、一人苦笑をしているのだった――。
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