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(な、何てえ奴だ)
若者はその全く計り知れない存在に恐怖したが、背に腹はかえられない。
とうとう観念することにした。
「分かった、尽くす!尽くすからやめてくれえっ!」
「ふむ…」
女性は満足げに頷くと、地を揺らすの止めた。
「妾の名はヒミコ。そのスカスカの脳みその中に、忘れることのないよう叩き込んでおくがいい」
ヒミコは愉快そうにアッハッハッハと笑い声をあげる。
「…か、神だ…。ありゃあ神だ」
その様子を見て、別の若者がごくりとつばを飲み込み、呟く。
老人達はヒミコに対して有り難や有り難やと拝みだした。
「…ヒ、ヒミコ様万歳!」
その内に、誰かがそう言い、腕をあげた。
「ば…、万歳!」
「ヒミコ様万歳!」
すぐにその輪は広がり、村は万歳の渦に包まれる。
『万歳!万歳!万歳!万歳!』
新興宗教の誕生だった。
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