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“そこでだ。下界の男よ、お前のところにしばらくはヒミコを預けよう”
ヒミコの父の突然の提案だった。
その言葉を聞き、ヒミコの顔が明るくなる。
“下界の者と天上界の者が仲良く暮らせるわけはない。どうせ自ずと壊れる関係だ”
が、すぐに暗くなった。
ヒミコはすぐに反論しようとしたが、その前に太一が口を開いた。
「悪いけど、そうなることはねえだ!俺は一生ヒミちゃんを大切にする!」
思い切った太一の宣言にヒミコは顔を紅らめたが、ふんとヒミコの父は鼻で笑った。
再びの突風に太一はまた吹き飛ばされそうになる。
“今はそうやって理想を振りかざすがいい。しかし、ヒミコを泣かせるようなことがあったらお前の命は無いと思えよ”
それだけ言い残すと、空からの威圧感は消え去った。
少しの間のあと、太一とヒミコは顔を見合わせる。
「許可が出たみてえだよ?」
「うむ、みたいだな」
2人はどちらからともなく笑い合い、これにて一件落着と手を繋いで帰路についた。
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