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――数日後。
太一は汗を流しながら働いていた。
先日の大地震で倒れた家の修理である。
「おめえのせいでまた壊れちまったじゃねえか!」
家の主人が太一をどやした。
太一は俺のせいではないと言い張りたかったが、その結果ますます怒りをもらうことは明らかだったので、諦めて作業にいそしむことにする。
「よく働いているではないか」
そこにヒミコがやって来た。
ははあと頭を地にすり付けている村人達を尻目に、ヒミコは太一と話しだす。
「妾も手伝ってやろうか?」
「んあ?」
予想もしていなかったヒミコの申し出に、太一はまぬけな声をあげた。
「何だあ、今日のヒミちゃんはずいぶん優しいなあ」
にこにこしながら太一はヒミコを褒めた。
そう言われて、ヒミコはいつものように紅くなる。
「べ、別に…。茶を飲むのに飽きただけだ」
「だから、俺に会いたくなったってことかぁ~」
太一はヒミコの言い分を勝手に解釈し、へらへらしながら言った。
ヒミコの額にピシリと青筋がはしる。
「からかって…いるのか?」
地面が少しずつ揺れだした。
慌てて太一も地面に頭をすりつける。
「うむ、それでよい」
ヒミコはその様子を見て満足したようだった。
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