7章

4/6
前へ
/20ページ
次へ
P103 ビロートーク(笑) ページラストのシーン 服装:P102と一緒 嗣人(ぶかT)、四季私服 「大丈夫?」 先輩がそう言い、ミネラルウォーターのボトルを僕に差し出した。 僕はそれを受け取りながら言う。 「何が?」 「からだ痛くない?」 「うん、痛くない」 僕は水を一口飲んだあと、少し笑いながら言った。多少頭痛がしたけど、報告するまでもない。この時はそう思った。 「でも先輩、いつもより少しがっついてたよね」 「お腹空いてたからね。それでも我慢した方だけど…」 申し訳ないといった顔をする先輩の肩に、僕はすとんともたれかかった。甘えたい、そんな気分だった。 「うん、でも先輩は、基本前から僕に優しくしてくれたよね」 「そうだっけ」 先輩は言う。まるで今、その事実に気付いたように。 「うん、そうだよ。先輩は優…」 僕は途中で言葉を中断させた。中断せざるえない事態が発生したからだ。頭に鈍痛。例えるなら隕石、隕石が落ちてきたみたいな衝撃に見舞われたからだ。僕は小さく呻き、頭を押さえた。 「なんかしんどそうだね」 状況を察した先輩が、慌てて僕に声をかける。 「……多少は、でも先輩のせいじゃなくて、おくすりの離脱症状だから」 変な方に勘ぐられては困る。せめてもと、僕は無理に笑顔を作り言った。 先輩がそのまま、僕をベッドに横たわらせる。 「なんか俺にできることってある?」 先輩が聞いてきた。 僕はぼんやりと先輩を見上げる。 「じゃあ、手繋いで。このまま傍にいて?僕が“眠るまで”。どこにも行かないで」 「うんいいよ」 先輩はそう言うと、立ち上がり部屋の照明を消した。そして僕の横に身体を倒す。 僕は、左手で先輩の右手を掴んだ。 「一人にしないで。絶対絶対、僕のこと忘れないでね」 僕は先輩の顔を見つめ言った。なぜだか急に悲しくなって、涙が出そうになった。 「うん」 先輩が頷く。 「約束、ゆびきりして?」 僕と先輩は、指と指を絡め指きりをした。 悲しみに襲われるのは、その幸せが、終わりの見えた幸せだからかもしれない。眠りにつく前、僕は“それ”を思い出した。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加