6章

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P79 ・四季と稔(私服) リビングテーブルの椅子に向かい合わせで座り会話 四季にクスリのリスクを問われ、それも嗣人の意思だから。と四季に言う先生。ちょっと怖いくらいの雰囲気でいい。 ↓↓以下文 「どんな?」 俺は聞いた。 先生が向かい側の椅子に座った。重苦しい顔をしている。 「何もない宙を見てぶつぶつ言ったり、いきなり殺さないでって叫んだり、泣いたり。今よりずっと変でしょ?」 「そんなことが…」 白々しくそう言いつつ、俺は思っていた。 俺が帰ったあとも、嗣人くんはあの現象に苦しんでいたんだ。そして、それを自重する余裕がなくなるくらい、精神的に追い詰められていたんだ。 「それで先生はどうしたの?」 「もちろん手に負えなかったから、専門の病院に診てもらったよ。そこで薬を処方してもらって、今は治療中」 「治るの?」 俺は反射的に聞いた。 「どうだろう。でも薬が効いている間は幻覚もみないし、気分も安定するって」 先生は一呼吸置いて答えた。 安定?そう聞き返したくなるのを、俺はぐっと堪えた。 「その薬、リスクは?」 「あるよ。でも嗣人がそれでもいいって。嗣人の強い意思だよ」 先生の口調は、反論の余地を与えない気迫があった。 「まぁ、何にせよ、これは家族の問題だから」 そう言われると何も返せない。俺は嗣人くんにとって何者でもない、他人なのだ。
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