6章

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P83 嗣人(P81と同じ服) 嗣人の部屋 四季の布団で、丸まって眠っている嗣人くん(猫みたい) ↓↓以下文 俺は思わず吹き出した。四月のシリアス顔がレア過ぎたからだ。 「ない!それだけはない!絶対ない!」 俺はオーバーなくらい手をぶんぶん横に振り否定した。その間にも笑いは止まらなかった。 「自覚ないんだ」 四月は憐れむような目付きで俺を睨み、大袈裟なため息をついた。 「自覚?」 俺は聞き返した。 「うん!そう」 突然、元気よく返事をしたかと思うと、四月がその場で立ち上がった。 「俺はね、俺は、つぐちゃんのことが好き!だい、だい、だーいすき!」 四月はまっすぐ拳を突き上げ、誇らしげに言った。 「自覚って、そういうこと」 四月が俺に笑いかけた。 「…うん、わかった、十分伝わった…」 俺は四月の熱弁についていけず気後れした。 「それで?それならどうして嗣人くんとしないの?」 俺は疑問を口にする。 「好きならすればいいじゃん」 「分かんないかなぁ」 四月はその場に座り、今度は説教じみた口調で言った。 「あのね、そういう行為は好き同士じゃないとしちゃいけないの。好き同士じゃないと、したって苦しいだけなの」 あほくさ、いつもならそう言うが、今日の俺は違った。 「うん、そうだね、俺が間違ってたよ」 「へ?」 言い返す気満々でいた四月が、素っ頓狂な声を上げた。 「急にどうしたの兄さん」 「俺、間違ってた。そうだね、そうだったんだ」 俺は飛び込むように、先に一人、部屋に戻った。嗣人くんが俺の布団の上で、猫みたいに丸まって眠っていた。 今まで辛い思いをさせてごめん。俺は、彼の寝顔にそう言いたくなった。もっと早く気付いていれば… 俺は今さらになって自覚した、俺が今本当に好きなのは、嗣人くんなのだと。
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