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P102
服装:嗣人はパンダのパーカーにショーパン(イラスト参照) 四季は自由(夏)
「本当に?」
先輩がまた聞いてきた。それも今度は嬉しそうな顔で。しつこい、そう思ったけど、僕はその笑顔見たさでもう一度答えた。
「思ってないって言ってんだから、思ってないよ」
そんなに僕からその言葉が聞きたかったのだろうか。先輩はまた晴れやかな顔をした。まるで、全ての重荷から解放されたような、そんな顔。
僕は思った。この思い、もっと言葉以外、全身で伝えられたら。
「先輩は?先輩は僕としたくないの?他の誰かがいいの?」
僕は先輩を見上げ言った。まずは先輩の気持ちが知りたかった。
「そんなこと、あるはずないじゃん」
先輩は言う。ならばと僕は先輩の手を、自分の服の中に忍び込ませた。なぜだろう、いつもの百倍恥ずかしい。好き同士だから?
だから照れるのかな、この台詞だって。
「じゃあ先輩は、黙って僕だけを食べればいいの!」
言ってみて、顔から火が出る、ありえないけどそう思った。
先輩はよほど僕の言ったことが面白かったのか、手を叩き笑いだした。先輩は、いつの間にか“人間の姿”に戻っていた。いい加減なことは言いたくないが、緊張がほぐれたからかもしれない。
「……そんなこと言って、止めてあげられなくなるよ?」
笑いはしたが、まんざらでもなかったようで、先輩はうんと優しく目を細めた。
「うんいいよ」
はじめからそのつもりだったので、僕は快く了承した。僕の返事を待っていたかのように、先輩が僕を抱きかかえる。抱き方は俗にいう俵抱きだった。
「僕、先輩ならどんなことしたって許してあげる、だって先輩のこと大好きなんだもん」
先輩の背中を見つめ、僕は本心を言った。
直進方向はベッド。果たして鳴りっぱなしの僕の心臓は、爆発せずに済むだろうか、それだけが不安要素だった。
イラストは、もじゃこさま
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