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Scene 天月 凛 start
悲しかった。
大地が腐り、海は干からび、毒の沼が広がり、日の光を失い、人類は地上を追い出され、行き着いた先は、何も無い月を思わせる程。
しかし、そんなありきたりな荒唐無稽な物語────よりも、ただただ、悲しかった。
虚しかった。
どれだけ努力しても、それが報われない事よりも、時間を失うよりも、意思を失う事。それは虚無なる宇宙とさえ思う程。
よりも、ただただ────虚しかった。
苦しかった。
届きそうで届かなくて、目にさえも見えなくなって、理解さえも、苦しみさえも分からなくなる。先に反則をしたのは僕だったが、いつのまにか相手が反則をして、反則と力に呑まれて僕は────悲しく、虚しく、苦しんだ。
見る夢は悪夢ばかりになった。
親友と遊んだ日の夜も、幼馴染のお節介を受けた日の夜も、悪夢しか見ない。
まだ、僕は終わってないのだろう。
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