万象皆無

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外は社会と言う名の、世界が待っていた。 その社会と世界からの僕の評価は、“狂ってる”と烙印を押されている。 さらに言うなら、烙印は火傷ではなく刻まれている、烙印ではない────消えない刻印。 まぁ、狂っているとは言っても、タイムワープやらタイムリープができるわけではない────したいところだが。 まぁまぁ、読んで字のごとく頭が狂ってる、イカれてる“らしい”。 “妄言者”。 5年前の、12歳の僕を知っている人は、そんな適当なあだ名で呼んだりもする。 ちなみに、この場合の適当とは適切な当たりの方である。 嘘なんて何一つ言ってなかったのになぁ……しかしまぁ……他から見ればその通りなのか……。 で、そんな狂った僕はこの世界が嫌いだ。 何が言いたいかと言うと。 あれだ、今の人達はだいたいというか、ほぼ“決まっている”って事だ。 決まっていると言うより決めている────人生を。 生まれた瞬間から将来働くためのカリキュラムが組み込まれている。 幼稚園、小学校、中学校、高校、大学。 それらが終業すると、就職。 ほら? 決められている。 いや、決めている。 「人生とは全てが選択か……」 そんな事を言いつつも、僕は高校に通っているんだが。 普通の一般的な高校二年生は、こんな事、つまらない事は、考えてないのかもしれない。 が、僕は考える────妄言者だからなのかもしれない。 それも間も無く終わりのチャイムが鳴る。 気づけば“狂い”から5年が経過していた。 時の流れは早い────いや、僕にとっては長かった。 “糞野郎のハッセン”のせいで2年追加になったのも長くなった原因の一つだ。 そんな事を考えつつ、真夏日の中を学校に向けて足を運ぶ 。 手紙ぐらい置いていこう。 僕にとって今日は選択の日だった。 間違いなく人生で一番の選択。 そしてやはり、選択するのが────嫌いだ。
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