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そのあとは先週と同じように洗濯物を二人で干して、やっぱり同じように布団に入った。
布団に入ると、当たり前のようにすすーと寄ってくる芽衣さんにちょっと笑ってしまう。
腕枕のいい場所に頭を落ち着けると、相変わらずの寝付きの良さで、芽衣さんはすぐに小さく寝息を立て始めた。
俺の腕の中だということを意識してしまって眠れない、くらいのことを少しは言ってみてほしいものだ。
自ら寄ってくるくらいなのだから、そんなことを言うはずがない、ということはわかっているのだけれど。
どうやら俺は本当に抱き枕ならぬ添い寝枕らしい。役得なのだと、素直に喜んでおくべきなのだろうか?
まぁ……疲れているのだろう。
仕事中に眠そうな素振りを全く見せないのが嘘のようだ。
たった一日寝不足になるだけで結構辛いのに、それが慢性的になったらどれだけ辛いのだろう。
悪夢を見ると言っていたけれど、一体何が芽衣さんをそこまで苛んでいるのかが分からなくて、歯噛みする。
今日、ウチに来なかったなら、芽衣さんはどうしていたのだろう。
一人で眠れない夜を過ごしたのだろうか。
高杉さんのところへ行ったのだろうか。
芽衣さんは「眠りに行っている」と言っていたけれど、高杉さんは、知っているのだろうか。
何を、どこまで、知っているのだろうか。
情報が少なすぎて何も見えてこない。
ただ、いつか見た芽衣さんの胸に残された朱い跡だけを思い出した。
ついこないだのような気もするし、随分前に見たような気もする。単行本のように出来事も想いもぎゅっと詰まった日々が続いていて、あの日から今日までをとても長い時間のように感じる。
朱い花を思い出すと同時にチリチリと燻り出した胸の内のものを持て余して、寝返りが打てない代わりに、大きなため息に乗せて一度に吐き出した。少しだけ、芽衣さんのふわりと膨らむ黒髪が、自分の吐き出した息で揺れる。
埒が明かない考えはこれ以上考えても無駄なだけだ。やめよう。
朝晩が涼しくなってきて、腕の中の芽衣さんの体温がとても心地よい。
その温かさに集中すると、胸の奥でチリチリと燻っていたものは途端に溶けだしていった。
惰性というかなんというか、三週も続けばさすがにちょっと慣れてきた。
心臓が早まるというよりは、心地よさに身を任せる感じで、俺は思ったよりも簡単に意識を手放していた。
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