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芽衣さんは膝の上に頬を乗せて、傾いた確度の顔をこちらに向けている。
体育座りとか。どこまでツボを突いて来れば気が済むんだ?
「おはよう。寒いから、着といた方がいいよ。」
持ってきたカーデを芽衣さんの肩に掛けると、芽衣さんはありがと、と言ってふうわりと笑う。
朝から目に毒なので、色々と程々にしてほしい。
コットンガーゼの頼りない寝巻姿がなんというのだろう…庇護欲をそそる。メチャクチャに抱きしめて抱き潰してしまいたいという衝動が浮かぶが、どうにか抑え込んだ。
「台風が来るんだって。」
芽衣さんが見ていたのは、お天気情報、というよりは、台風情報のようだ。
こんな時しかつけない国民放送の中で、堅苦しい印象の喋り方で男性アナウンサーが情報を読み上げていた。
「そういえば、週末直撃って言ってたね。今夜から明日未明までだったっけ。」
どうりで朝からどんより、しとしとと雨が降っている訳である。
風はまだそこまで強くない。昼ごろから徐々に強くなるのだとアナウンサーが伝えている。
「そうらしいわ。早めに帰らないと、帰れなくなりそうね。」
確かに、台風直撃ともなると、電車も早めに止まってしまうだろう。
明日の未明まで暴風域内らしいので、明日の出勤時間の交通機関がちゃんと動くかどうかも怪しい。
「帰るの?」
なんとなしに言ってみた。
外は雨だし、これからどんどん雨も風も強くなってくるのだという。
会社に行く服もあることだし、別に帰らなくても困らなそうだ、と単純に思ってしまった。
「え?帰ろうと……思ってた、けど。」
「けど?」
「ええと……居ていい、の?」
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