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ピッピピ、ピッピピ、ピッピピ、ピッピピ…
アラーム音が鳴り続ける中、ぼんやりと瞼を上げる。
無機質な音をあげ続けるスマホを探って、枕元に手を這わせる。
手にとった画面に表示された「AM7:40」のデジタル文字を眺めながら、スヌーズ機能に感謝する。
いつものことだが、大概最初の───7:30のアラームで目覚めることは、ない。
寝起きは悪い方でもないと思うが、こんなもんだ。
一人暮らしなのに無意味に広いセミダブルのベッドを出て、洗面台へ向かう。
顔を洗い、あまり生えていない髭を剃り、歯を磨く。
それから、簡単に髪の毛を濡らし、
ドライヤーを使って毛先を遊ばせる。
生まれつき染めたように色素の薄い柔らかな髪の毛は、それだけである程度見れるかたちになってくれるから有難い。
前髪を少しつまみながら、伸びたな…と思う。
専門を卒業してから、5年間、美容師として働いていたが、さすがに自分の髪の毛を切るのは苦手だ。
週末にでも、和哉に切ってもらうか。
と、専門学校時代からの友人の顔を思い浮かべる。
久しぶりにあいつと飲むのも悪くないな、なんて考えながら、今日が金曜日だと思い当たる。
昼休みにでもLINEしてみるか、とそこまで考えたところで手を止め、鏡をみる。
ま、こんなもんかな。
ある程度のかたちにおさまった髪の毛に満足する。
インスタントのカフェオレを少し口に運びながら、ネクタイをキュッとしめる。
今日も、俺の「日常」が始まる。
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