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鬼ごっこの後半戦が始まってからも、俺は誰かを必死に探していた。
でも色んな逃走者を見つけても、捕まえる気になれない。どうしてだろう?
「あ、萌貴!」
名前を後ろから呼ばれて、相馬萌貴はそっちに振り向いた。
「──隼人!」
同じクラスの隼人が、笑顔でこっちに手を振っていた。
名字は確か…井上だったと思う。別に名前しか呼ばないから興味はないけど。
漸く(ヨウヤク)仲の良い友達に会えて、俺も笑顔になった。
「隼人、まだ捕まってなかったんだな!」
「もちろんだよ萌貴、そんな簡単に捕まったらサッカー部の沽券(コケン)に関わるだろ?」
そういう隼人はサッカー部の期待の新人らしい。
二年になったらキャプテンは確実だとか。
「そっか! でも、会えて嬉しい!」
「そ、そうかい? 俺もだよ」
はにかみながら言う隼人は、何だか照れてるみたいだった。
嬉しい気持ちもあったけど、それ以上は特に気にならなかったからそのまま別れようと思って、
「じゃ、またな隼人! 頑張って逃げろよ!」
「え? や、ちょっと待ってよ萌貴!」
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