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作り笑顔がバレたところで、所詮他人だ。
雪斗は自分から自身のことを話したことはない。
篠崎家の人間なら知っている人も多いが、それも演技を身に付ける前に会った人達だけだ。
学園の人間に至っては誰一人として知らないのに、会って間(マ)もない萌貴君に言う筈がない。
「嘘なんて吐くなよ! お前の笑顔は、本物じゃない。俺にはわかる!」
自分にはわかる。これほど無責任なセリフもないだろうと、雪斗は思った。
しらを切ることは、やはり無理らしい。
雪斗が話したくないことを汲み取ってくれる大人ならまだ良かったのに、彼はわかると言いつつ、僕の気持ちは一切(イッサイ)わかってくれないのだ。
「……私は嘘を吐いています」
そう僕が言うと、萌貴君は瞳を輝かせた。
罪悪感が胸を掠める(カスメル)。
「ですがそれが、あなたに何の関係があるのですか?」
「えっ……?」
ああ。彼が素直にわかってくれれば良いのだけど。
「“もし仮に”、私が皆さんに隠し事をしているのだとしても……あなたには関係ありません。何故あなたに話さなければならないのですか」
「……っで、でも!」
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