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「……違う」
震える声で、雪斗は言う。
いつの間にか抜けていた力が、また握り拳を作らせた。
「違います……!」
彼は、まだ幼い子供なんだ。
だから黙っていてくれない。
僕は、それに答えなくちゃならない。
「私がそれを望んでいるから、今があるのです」
僕は、篠崎雪斗は、僕が望み、僕が作った。
だって、僕は無理をしてるんじゃない。努力しているだけだ。
「今までの笑顔は全て偽物でしたと、そう言えばいいとでもいうのですか?」
みんなを騙しているつもりなんて、最初から無かった。
「そんなこと、言う必要が無いんです」
萌貴君はずっと黙ったまま。
悲しげに顔を歪ませて、どうしてと、雪斗に語り掛けるように真っ直ぐに見てくる。
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