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職務をまっとうさせようと萌貴君を引き離すことで嫌われるのが怖かった。
普段同じ生徒会やクラスの一部の人としか話さないみんなが初めて興味を持った、気色の違う生徒との交流を邪魔したくないという気持ちも大きかった。
でもそれは、ひたすら逃げていただけなのだ。
幼い子供のように萌貴君を避け続けた。
眼鏡と髪の奥から見えるその目が、僕の全てを見透かそうとするかのように、真っ直ぐに見てくる。
他の人に知られたくなくて、萌貴君にこれ以上気付かれたくなくて、ただただ逃げて、逃げて。
どうしようもない程、臆病だ。自己嫌悪の念が、雪斗を蝕んで(ムシバンデ)いくようだった。
雪斗は無表情のまま走り出す。
聞こえない萌貴君と明良の声が、もっと確実に聞こえなくなるように。
『萌貴、とりあえず風紀室に……』
『なあ、明良』
『何だ?』
『風紀室、行ってからでいいから……俺も鬼ごっこ、戻りたい』
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