6、新入生歓迎会 後半戦

41/42

2602人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
それは、嫌だ。 「雪斗っ! 待て!」 待て、しか言わない萌貴君。理由を言わないのであれば、捕まえようとしているだけ。止まったりなんかしない。 《あと、いっぷぅぅううん!》 たたらを踏みそうになる程大音量で放送が響く。 あと1分。だが雪斗の体力は限界に近い。 「くっ……はっ………」 「雪斗っ!」 もう人通りなんて関係ない。口数が少なくなり追いかける足音だけ響いてますます焦る。 ……近付いてきてる、気がする。 あの集団に追い掛けられるのとは違う恐怖が確かにあった。 もう、ほおっておいて欲しいのにっ。 他の生徒が僕に気付く。でも雪斗の足の速さは遅くはない。案の定、生徒が反応する頃には雪斗は通り過ぎている。 逃げるべきは萌貴君だけ。でも、やばい。今にも足が崩れ落ちてしまいそうな程震えている。 すぐにでも転けてしまいそうだと思ったとき── 「──‥うぁっ!」 バランスを崩して、でも何とか持ちこたえる。
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2602人が本棚に入れています
本棚に追加