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それは、嫌だ。
「雪斗っ! 待て!」
待て、しか言わない萌貴君。理由を言わないのであれば、捕まえようとしているだけ。止まったりなんかしない。
《あと、いっぷぅぅううん!》
たたらを踏みそうになる程大音量で放送が響く。
あと1分。だが雪斗の体力は限界に近い。
「くっ……はっ………」
「雪斗っ!」
もう人通りなんて関係ない。口数が少なくなり追いかける足音だけ響いてますます焦る。
……近付いてきてる、気がする。
あの集団に追い掛けられるのとは違う恐怖が確かにあった。
もう、ほおっておいて欲しいのにっ。
他の生徒が僕に気付く。でも雪斗の足の速さは遅くはない。案の定、生徒が反応する頃には雪斗は通り過ぎている。
逃げるべきは萌貴君だけ。でも、やばい。今にも足が崩れ落ちてしまいそうな程震えている。
すぐにでも転けてしまいそうだと思ったとき──
「──‥うぁっ!」
バランスを崩して、でも何とか持ちこたえる。
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