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「じゃあ最後、副会長の篠崎雪斗を捕まえた……1年Aクラスの萌貴! ステージに来い!」
「おう!」
返事する必要はないのだけど元気な萌貴君の声が聞こえて、彼は走って雪斗のすぐそばまで来た。
その間もずっと飛び交う萌貴君への罵声。この一端は自分の所為(セイ)だと思うと心苦しい。
──制裁は、雪斗に憧れて生徒会親衛隊に入った内の1人が中心となって起こしたものだ。
隊長格ではないが、言い出したのはその生徒で、残りふたりはそれに加担したに過ぎない。
副会長の自分を思って行われた制裁。
元をたどれば、萌貴君の問い詰めを否定しかせず、悲しい顔まで作ってみせた自分の所為なのだ。
本当のことを言うつもりはない。けれど、開き直ることも出来ないとは救えない。
自嘲的な笑みでも零れる(コボレル)なら良かったのに、生憎(アイニク)、雪斗の顔は感情で動くようには出来ていない。
普段の穏やかな表情のまま、僕は萌貴君と向かい合った。
「萌貴。雪斗への命令を言え」
「お、おう!」
ぐっと顔を上げて、萌貴君は僕を見る。
何かを決意したような目はきらきらと輝いているように見え、雪斗は気圧されていた。
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