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そう言ってやるのがやっとだった。
夜神は何も言わず、けれど何か言いたげにじっとオレを見据えてくる。
…息が苦しい。
目の前の鋭い瞳に、自分でも知らない胸の内を暴かれてしまいそうで。
「…ハァ…」
やがて何を思ったのか、夜神は溜め息をついて手を離した。
オレはというと、漸く解放された安堵に気づかれないように息をついた。
「…アキ、俺が昨日言ったこと、覚えてるか?」
「昨日?」
唐突な質問に、オレは首を傾げる。
「『どんな進路でも、アキと離れる道は選ばない』───俺は、それを違えるつもりはない。」
「夜神…」
「俺はずっとアキの傍を離れねぇ。」
そう言うと、夜神はそっとオレにキスをしてきた。
触れるだけの軽いキス。
愛する人との、キス。
なのに…オレの心が満たされることはなかった。
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