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ーー
『家族に付いて行くつもりはねぇよ。』
別れ際、夜神が告げた言葉に、オレは賛成も反対もできなかった。
夜神にとって最善の選択をすればいい、とは思っている。
だけどあの夜、夜神が別れ際に告げてきた内容に、オレはどうしてもモヤモヤせざるを得ない。
…なら逆に、夜神が『付いて行く』と即答したら、モヤモヤしなくて済むのだろうか?
アイツが何の躊躇いもなく家族を選んだとしたら、オレは快く送り出してやれるだろうか?
「───…」
ふらりと立ち寄った本屋で何を買うでもなくただ並べてある本を手に取っては戻しを繰り返す。
夜神は今日は一日中バイトだと言っていた。
だから朝から一度も夜神の声を聴いていない。
…いや、別に、夜神の声を聴かないと不安とか、そんなんじゃないケド。
「うわっ───」
その時、すぐ近くで小さな悲鳴と、本がバサバサと落ちる音がした。
オレが立っている棚の反対側を覗くと、スーツ姿の男性が棚の前でしゃがみこんでいた。
その周りには、本が数冊散らばっている。
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