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連れてこられたのは、本屋から歩いて10分程度に小さな喫茶店。
人通りがあまり多くなさそうな路地にあって、オレ自身初めて入る店だった。
「私はブレンドコーヒー。君は?」
「えっ…あー、アイスココアで。」
うーん。
やっぱり緊張する。
夜神の父親がウェイターに注文するのを見つめながら、オレはテーブルの下で両手を握りしめた。
「───まだ名乗っていなかったね。私は夜神 龍平(ヤガミ リュウヘイ)。ご存知の通り、諒の父です。君の名前を伺っても?」
温和な笑みを湛えながら、夜神の父親の龍平さんが言った。
「如月…暁です。」
「如月君か。いつも息子が世話になっています。」
「あ、いや、世話だなんて…」
ぺこりと頭を下げられ、逆にこっちが恐縮してしまう。
龍平さんは顔を上げると、少しだけ笑みを引っ込めた。
「息子から、うちの事情を聞いてるかな?」
事情…
勿論、聞いている。
ただ夜神本人からではなく、真哉さんから聞いたのだけど。
黙って頷くと、龍平さんは困ったように眉尻を下げた。
「そう…なら、話す手間が省けたな。諒は、あんなナリをしているけど、本当はすごく家族想いの優しい子なんだ。」
「…知ってます。」
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