郷愁

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布団の中から差し出した私の手に気がついた兄の言葉がとまる。 次に目が覚める時には、もういないのでしょう? 「手…、握って。」 「先に薬飲もう。」 「…お願い。」 大きくて温かい掌が重なる。もう離さない。 「次に私が寝たら…、兄さん、出ていくつもりじゃないの?」 「……。」 長い長い沈黙。 「一度縁あって家族になったのだから、最後まで一緒にいよう。お母さんにも美月にとっても、お兄ちゃんはもう大切な家族なの。」 兄の後ろに立っていた母の切実な声。 握った手に力がこもる。兄の肩が震えていた。 兄の泣く姿を見るのは初めてだった。 情の厚い母が大好きだった。 いつも優しく、心も体も大きな兄を私は愛した。
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